Even G2、ゼロからの再構築。その舞台裏

Even G2、ゼロからの再構築。その舞台裏
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Even Insider へようこそ。

この新シリーズでは、私たちがどのようにプロダクトをつくっているのか、その“内側”に深く踏み込んでお伝えしていきます。

エンジニアリング上のブレイクスルー、ソフトウェア開発で直面した課題、そしてそれらを支える設計思想まで。

ここで語るのは、表に見えるマーケティングの話ではなく、その下で実際に行われている仕事です。
その第一回として取り上げるのが Even G2 です。

Even G2 は新しい外観が注目されがちですが、本当に大きな変化は、一見しただけでは分からない部分にあります。私たちは前世代で残っていた根本的な課題――低遅延なデータ処理、安定したワイヤレス動作、そして持続可能な電力性能――を解決するため、エンジニアリングの中核となるフレームワークを抜本的に見直しました。

その結果、Even G2 は Even G1 を単に改良したモデルではありません。

内側から作り直した、まったく新しい再構築なのです。

アンテナスイッチ:レイアウトを一新し、信号品質を大幅に改善

テンプル先端部には、アンテナ、プロセッサー、バッテリーといった、デバイスの中でも特に重要なコンポーネントが集約されています。Even G1 では、この部品の積層配置が原因となり、相互干渉が発生していました。

具体的には、プロセッサーの動作周波数が LDS アンテナの有効領域に漏れ込み、信号強度を低下させるとともに、実使用環境における通信の安定性やレイテンシにも影響を与えていたのです。

Even G2 では、単にパーツをアップグレードするのではなく、内部構造そのものを再設計しました。

LDS アンテナとチップを搭載する PCBA の配置を見直し、高電流・高周波のコンポーネント同士を分離。さらに、内部の積層順を一から組み直すことで、電磁ノイズの低減を図っています。


これらの要素を構造レベルで分離することで、干渉は大幅に低減されました。

アンテナは周囲のコンポーネントが生み出すノイズと競合することなく、安定した出力を維持できるようになっています。

その結果、アンテナの挙動は予測可能なものとなり、信号の純度も定量的に改善されました。これにより、指向性の向上、ノイズ耐性の強化、そして約10%のゲイン効率向上を実現しています。

プロセッサーの刷新:より効率的なコアで、安定したパフォーマンスを実現

Even G2 と Even R1 におけるほぼリアルタイムな I/O 処理と、システム全体の安定性向上を実現するため、Even G2 では新しいプロセッサーを採用しました。

目指したのは単純な処理性能の向上ではなく、高負荷時でも一貫して安定したワイヤレス動作を実現することです。そして、この変更は明確な成果をもたらしました。

Even G2 に搭載された新しいプロセッサーは、約9dB高い送信出力を実現しています。これは、Even G1 と比べて実質的に約3倍の安定した通信距離に相当し、実環境でのテストでは約28メートルの通信が確認されました*。

実際の使用シーンでは、スマートフォンが離れた場所にあったり、バッグの中に入っていたり、壁越しであっても、接続が安定して維持されます。

受信側の性能、つまり感度も 3〜4dB 向上しています。Even G2 は、Even G1 では失われていたような微弱な信号も維持できるようになりました。これにより、日常使用において突然の接続切れや音声の途切れ、レイテンシの急激な悪化を防ぎます。電波が混雑した環境や、テンプル部分を手で覆ってしまうような状況でも、安定した動作を保ちます。テストでは、全体の挙動が最大で約700%安定していることが確認されました。

*テスト端末:iPhone 17、Samsung Galaxy Z Fold 

配線の追加:実績ある技術を、性能向上へと再定義

スマートグラスでは、左右のディスプレイが常に正確に揃って表示されることが不可欠です。

 Even G1 ではこれを、スマートフォン → 左、スマートフォン → 右、さらに左 ↔ 右をすべてワイヤレス通信でつなぐという、複雑なアーキテクチャで実現していました。しかしこの設計では、内部同期を維持するだけで不要な無線帯域を消費してしまいます。

ACK(確認)パケットの遅延や欠落が起きると、左右の表示にズレが生じ、肉眼で分かるレベルの同期ずれが発生することもありました。

Even G2 では、この仕組みをゼロ依存設計「HAO」へと刷新しています。

フレーム内部に、両側通信対応の FPC(厚さ0.1mm)を通し、左右ユニットを物理的に直接接続しました。

これにより、左右は同期のためにワイヤレス通信へ依存することなく、FPC を介して直接やり取りを行います。

この変更によって、内部同期は無線帯域を一切占有しなくなりました。これまで 3系統の無線通信 が必要だった構成は、2系統に削減され、左右ディスプレイは BLE 経由の ACK を待つ必要もありません。内部同期が外部データ通信と競合することもなくなり、Bluetooth は外部通信のみに専念。ディスプレイの同期は、パケットタイミングに左右されない「保証されたもの」へと変わっています。

その結果、OS アニメーションはより滑らかになり、消費電力も低減。左右の表示遅延は実用上ほぼ解消されました。このアーキテクチャ刷新は Even G2 の2日間バッテリー持続にも寄与しており、品質検証プロセスにおける同期ズレの発生率は 1%未満にまで低下しています。

ソフトウェアの全面刷新:最適化されたスタックで、さらなるパフォーマンス向上を実現

新しいハードウェア基盤が整ったことで、Even G2 と Even R1 のファームウェアを全面的に書き直しました。
これにより、通信スタックは Even G1 の制約を回避するための設計ではなく、新しいアーキテクチャそのものに最適化された形で動作するようになっています。あわせて Bluetooth も 5.2 から 5.4 へとアップデートし、接続安定性を直接的に高める機能を取り入れました。

この書き換えによって、電波干渉下でのパケット復旧の挙動、リアルタイム I/O 時のレスポンス、そして Even R1 が加わった際のマルチデバイス動作の安定性が大きく改善されています。

Bluetooth 5.4 で導入された PAwR(Periodic Advertising with Responses) により、Even G2 と Even R1 は通信チャネルを過度に占有することなく、効率的に接続を維持できるようになりました。

ここでの強みは最大スループットではなく、混雑した電波環境や部分的に物理的な遮蔽がある状況など、一般的なウェアラブル製品が不安定になりがちな環境下でも、予測可能で安定した挙動を保てる点にあります。

実際の使用において、Even G2 は追加の電力消費や接続の再ネゴシエーションを行うことなく、安定した動作を維持します。ユーザーがその裏側の処理を意識する必要はありません。システムはただ、自然に応答し続けます。

Bluetooth 5.4 環境下では、パケット衝突が 50%低減、消費エネルギーが 25%削減、干渉からの復帰時間が 35%短縮され、厳しい環境下でも一貫した接続体験を実現しています。

What’s Next – この先にあるもの

Even G2 のワイヤレスアーキテクチャは、現実の使用環境というプレッシャーの中でも予測可能に振る舞うシステムを目指し、数多くの小さくも意図的な判断を積み重ねて形作られています。

本章では、その中でも接続性とレスポンスを決定づける要素に焦点を当てました。

次回は、Even G2 内部に施されたもう一つのハードウェアの進化に目を向けます。

接続性能に直接関わるわけではないものの、装着感や使い心地、そして長期的なパフォーマンスを静かに支えている――構造設計の見直し、素材の変更、熱設計の改善、光学調整について掘り下げていく予定です。

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